愛と優しさ

 愛は渇き。水を求める者は、火に燃えている。
 愛は素晴らしいのだと誰が言った?
 意味のない言葉に幻想を求め、そこに酔いしれる──

 「愛してる」
 よく見れば、何も言っていないのだから。
 自分で溜めたものを吐き出す、吐瀉物だ。

 相手を、自分のものにしたいという欲求ほど、愚かなものはない。
 自分でさえないものを自分だと思い込み、ほかのものを、思い通りにしたいだなんて。
 「愛してる」
 てい・・のいい言い訳だ。
 とりつくろい。補足。※印の、小さな注。

 言葉は、盃。
 言ってしまえば、それだけのものになってしまう。
 縁取られた飲み口。
 もう、そこから溢れることはない。
 決められた形状におさまってしまう。

 やさしさも、意味がわからない。
 やさしい人って、どんな人?
 「自分に都合のいい人」のことではないのかな。

 愛してるとか、やさしい人とか。
 言った途端、ひとつ、終わる。
 何も、言わぬが花。

 でも、たまには、言う。
「愛してる」とか「やさしいね」とか。
 そして、笑い合う。