小々旅行?(2)

 結局、昨日は4時間で3010円だった。HPから印刷した割引券を持って行ったので、思ったより安く済んでよかった。帰りに、ココイチでカレーを食べて、スーパーでパイナップルなどを買って帰宅。
 しかし三年ぶり、利用を始めたのは十二年前からだったが、建物の老巧化が。外側は特に変わりなさそうだが、部屋のサウナのドアが、開けると少し下に落ち、閉める際に力を入れて上にあげないと閉まらなかった。

 また、部屋に入って一服、メニューなんかを見ていると、ソファーの後ろの壁から「トントントン!」と何か金槌で叩くような音が。壁を、何かなぞるような音も聞こえて、しかもほんとに響くように大きく聞こえて来た。少しの間、無音になっても、またトントントン。壁に、明らかに、何かしている音。

 絶望した。やはり、最上階の8Fの部屋にするべきだった。悲惨な気持ちに襲われた。三年前も、2階の部屋を選択し、下の方からか外からだったのか、工事をする音が聞こえ、それが滞在中ずっと聞こえていた。その時は、許容範囲だったが、今回は明らかに隣室、この音はひどい。

 部屋を変えてもらおうかと思ったが、もうタバコも吸ったし、また一階に戻って部屋を選び直すのも気が引けた。重い気持ちのまま、無料サービスメニューの食べ物・飲み物を選び、フロントに電話。

 隣りの部屋、工事か何かしているんですか? と訊いてみる。いえ、工事というわけではないんですが… とフロント嬢。なんか叩く音が、えらい聞こえてくるんですが、みたいに言うと、あ、では、ちょっと…(静かにするよう、言っておきます)みたいな弱いニュアンスで言われた。

 何となく、もう仕方ないな、とあきらめて、生ビールやらピザを注文。
 その後、まぁ静かになったので、よかった。

 サウナも、ドアのたてつけを除けば、上下段に一人ずつ、足を伸ばして横になれる広さだったし、いろいろ喋りながら汗をかけた。706号室のサウナは広い。そして有線放送の番組表、「B- 40」、「作曲家」を選べば、99%モーツァルトの楽曲がずっと聴ける。バイオリン協奏曲の、たぶん3番と、ディベルティメントの、たぶんニ長調が、とても印象に残った。

 ディベルティメント=喜遊曲。もう、この音楽だけで、しあわせな気分になれる。
「バイオリンの音を聞くと、発狂しそうになる」という友達の言を想い出したが、モーツァルトの場合、やさしさが、そんな狂おしくなる気持ちを包容してくれるように感じられる。ほんと、モーツァルト、イイんだよな…。

 しかし4時間、ちょうどよかった。中だるみするような時間、まだ時間があるからモッタイナイね、と、だらだらいるような時間もなかった。ひと眠りしたり、リラックスするうちに時間も過ぎ、ちょうどいい感じで部屋を出た。とにかく3010円は安かった。

 昔々にあったという「回るベッド」、これには一度でいいから、ほんとに乗ってみたかった。「回る」という発想が、まず凄い。部屋の中が「鏡」張りになっているという、何とも言えぬ部屋も未経験である。もしかして、こういうホテルの世界は、とんでもないアイデアを生み出す宝庫かもしれない。

 自動車工場で働いていた時、回るベッドで、回ってみたいんです、と上司に言ったら、田舎に行けば、まだあるらしいですよ、と言われたが、そんな話を交わしたのも20年ぐらい前になってしまった。えっちな話をして、盛り上がることもなくなった。そもそも、友達がいなくなった。

 でもやっぱり、昨日そういう場所へ行って、行くまでドキドキしたり、行ってからもドキドキしたりした。
 こういう胸のトキメキは、いつまでも、失いたくないと思う。たぶん、そう簡単に、失えるものでもないと思う。そう、ありたい。