時にきみは、その眼を厭わしく、潰してしまいたいと想う。
これがあるからいけない、これがあるから、苦しむばかりだ、と考えて。
まったくそうだ、その通りだ。
その苦が感じられるのは、苦を感じるものがあるためだ。
そのものを消してしまえばいい。
その通りだ。もう一つの眼、うなずく。
その眼のとりまき、手下ども、一つ目だらけの胴体もうなずいている。
そして手足は眼のしもべとなって活動をはじめる──
その眼自体へでなく、その眼に入る対象に向かって。
そうして隣国へ侵攻を試みるものもあれば、隣人へナイフを向けるものもある。
それを単なる悪と断じるものは、一つ目の怪物と変わらない。
それを悪としか断じない 一つ目おばけ
寄り集まって、あれが悪だ、あれが悪だと糾弾する
これが善だ、これが悪だと決めつける
そう決めた自分の中を探ろうともせず
その眼に映った外界のものだけを
いかにもわかったふうに断じてばかりだ
斯くして、人類史から戦争が抜けることはない
小さな火種も近所中にいっぱいだ
己の眼を疑わず
善悪すら疑わない
義眼を自己の眼にすり替えて
すり替えていることにすら気づかない
ひとりひとりが、己の中へ探求をはじめなければ
小さな一つ目どもが合体して 巨大な化け物になる
外界ばかりを変えようとしたって、何も変わらない
∴ 人間史から戦争が抜けきることはない
これは、一つの可能性
自己探求を、ひとりひとり、はじめること──
子どもも大人も、男も女も、関係なく
外界をつくっているのは
自分は違うと どんなに思ってたって
その外界をつくっているのは
眼に映る外界をつくっているのは
他ならぬ、この自己自身なんだから