読み返し書き返し、200枚の原稿と睨み合っていた。
改めて読み返し、実につまらないと思った。
まったくその内容、無意味だと思った。
あれほど、一生懸命に書いたようなもの、それが全て無意味にみえた。
一字一句、一文字一文字に、何の意味もないようにみえた。
「人間に死があるように、小説にも死がある。
さらに決定的に言えば、何かのためにどんなに懸命に書こうとも、それは釈迦の掌の上を走り回っている孫悟空のようなものなのだ。
結局は、無意味なのである。
しかし、ここで大切なのは、走り回っている孫悟空の方は、真剣であったということなのだ。」
椎名麟三の、そんな言葉に救いをみて、また私は何か書きたいと思っている。