それにしても恥というものを知らなくなった、知ろうとしなくなった、自覚するのを避ける術だけに長けるようになったものだ… 意識をしないよう、無意識に自分を無意識へ持って行くことが自然のようにできるようになったものだ。
たいした〈進化〉だ、恥じ入ることをしなくなるとは! つまずいてコケそうになったのを人に見られる、そんなちっちゃなことの恥ではない、意識はもっとでかいもんだ、深く高く無限なもんだ、だから恥を知らぬよう自分を持って行くことは可能性を捨てる、自己としての変化成長といったものをそこで止める。それにさえ気づかない、止めたところから始めようとする、肝心な自己の足を知らぬまま歩き出すようなもんだ…
恥じ入ることは辛いもんだ! 知らなきゃそんな辛さも知らないで済む、「楽になる」ただそれだけのために〈恥〉は、恥を知る〈知〉は手を付けられぬまま錆び、細かな粒に、屑になっていく。環境汚染、身から出た錆、ぐるり回ってその身に降り掛かる、「誰のせいだ?」とまわりを見渡す… 自分の足から出てることには無頓着!
ほんとうに考えないということは恐ろしいことだ、まさに地球を滅ぼす… 滅ぼす能力をもったくせに、考える能力を「苦しいから」とポイ捨てするとは! 目に見えるものばかりを信じるからこうなる… 信じてることさえ無意識だ…
考えるとはどういうことかって? 昨日卑近に起こった、目にした出来事を書こうか… 昨日スーパーに行った、会計を済ましている最中、ぼくは袋詰めをする場所の方へ目を遣った… 車椅子に乗った老婆がいた、彼女がロールから袋を取ろうとしていた… だが届かない! 指先には触れるんだが、触れることができるだけだった。
ぼくはけっこう買い物をしたので会計に時間が掛かっていた。その間、老婆はずっとロールの袋を取ろうとしていた。彼女の両サイドには若い女と主婦らしい女がいた、二人とも自分の袋詰めばかりしてる、すぐ隣にいる老女がずっとロールに手を伸ばし続けているのに。
見ていて腹が立った… その二人にではない、なぜそんな無視ができるのか、すぐ隣にいる老女を… その「無視をする」「見て見ぬふりができる」神経に対して腹を立てたんだ。
そのうち悲しくなった、そのうち哀れに思った、愚かとも思った… 会計が済むと、老婆の両サイドの二人もいなくなった、ぼくはそこへ行ってロールを回し袋を取る… 何枚要るか訊いた、三枚、三枚取った、それだけのことだ、何も自分がイイことをしました!を主張したくてこんな文をわざわざ書いてるんじゃない、恥というのはこういうもんだと云いたいんだ…