ピカソの「ゲルニカ」

 この絵は、ほんとうに凄い。
 以前から心につきまとっていた絵ではあった。
 先日、テレビで偶然この絵を主題にした番組を見て、この絵の凄さの再確認をした。

 この「ゲルニカ」は戦争の悲惨さを描いた絵である。
 しかしこの絵には、赤い血も、爆撃の閃光も、ない。
 白と黒しか、色彩は使われていない。

 青の時代もあったピカソの、「色を捨てた」手法。
 そして戦争の現実は、そのままの現実のように描かれていない。

 頭を経由せず、心だけで感じる絵。
(だいたいの絵が、そうだとしても)

 赤い血が流され、黒い死体に埋もれるのではない、
 そこにあるのは、哀しさ。みぢかに感じられる、哀しみ、哀しみ。

 この絵は「わかりやすいように」描かれている。

 ピカソの絵は、「わからない」という人もあるが、実はわかりやすい。
 そのまま、感じればいいのだ。
 頭で、何やかんやと考えるのは、あとまわし。

 「ゲルニカ」、ピカソが感じた、マドリッドの空爆のむごさを、自分の中へ掘り下げ掘り下げ、それでいてシンプルに描いたようなこの絵が、焼印のように心に残る。

 今日、8月6日は、広島に原爆が落とされてしまった日。
 もう二度と、原爆に限らず、いくさが、国家間に限らず、些細な日常でも、起こらぬよう。