派遣社員のK君は、なかなか、シゴトがデキナイようである。
今日も何かをエンジンの中に落とし、そのまま流して、上司から呼ばれたそうな。
だが休憩所で、たまたまぼくと隣りに座っている。
最初は、「チャラチャラしてヤだな、こーゆーヤツ。」と思っていた。
今も、その印象は変わっていないが、隣りに居るので、なんとなくしゃべっている。ピアス、ボサボサの茶髪、ヘラヘラ笑い。
K君とぼくの座るテーブルには、他に何名かが座っている。
彼らは、あまり積極的にK君としゃべろうとしない。そのチャラチャラさと、シゴトのデキナサ所以であるようである。
しかし、しゃべっていて感じるのだけど、確かにフニャフニャしてて、どうしようもない。だが、それは、それがK君なのである。
ぼくは「チャンとヤレよ、仕事。不良品。流すなよ。」何回か、それとなく言った。
だが、どうも、相変わらずのようである。工程が遠いので、彼の働き具合が見えないが、大体の察しはつく。
「1時間くらいしか、寝てないですね、きのう。」
「のんべんだらりと、酒飲んでます。ウオッカ、ビール、焼酎。」
ぼくの質問に、ふにゃふにゃ答える。
「お前なぁ、アル中になるぞ。」(それはオレか。)
18歳の彼は、まったく、まっさらに、なーんにも考えていないようなのだ。
いや、彼なりに考えてはいるのだが(考えてると思うのだが)、軟体動物のようで、つかみどころがない。
しかし。
ぼくが、そーっと言いたいのは、「ホントはネ、イイんだヨ、シゴトなんて」ということのようである。
大きな声では言えないが、イイんだヨ。
「イイ」には、OKの「イイ」と、GOODの「イイ」があるけれど、この場合は、受容の意味の、OKだ。
オレ個人の中で。職場的には、知らんよ。
どういう動機でお前が働いてるのか、オレは知らん。明日、訊いてみるか。
それはそれとして、この記事で云いたかったことは、
── シゴトがデキナイ、という理由だけで、コイツはダメなヤツだ、つきあったら、こっちにまでトバッチリが来る。上司の目が、気になる。つきあわないようにしよう。
などという根拠で(なんという根拠だろう)、K君をノケモノにしないでほしい、ということだ。
ほんとにどうしようもないヤツだと思うけれど(オレもそうだ)、しかし、だからといって、シゴトがデキル・デキナイで、そいつをまるごと計るな、ということなのだけど… こんなこと、ここに書いてもダメだわな。
でもサ、シゴトがデキル=有能、なんて、おかしいように思うんだけどな。
いや、一番云いたかったのは、「シゴトがデキナイ奴、というのがあっても、そいつとつきあうと、なんかつきあった自分も、ダメな奴、みたいな目で、まわりから見られるのがイヤ!」って感じが、イヤなんだな。
シゴトがデキル、デキナイは、実は、たいしたことないんだよ。
デキナクたって、イイんだよ。
ということが云いたかったんだけど、ダメなんだろうナ、やっぱり。