池田晶子の「人間自身」

 本の到着が楽しみだ。いつ来るんだったっけ。

 たしかこの本、「自殺のすすめ」とかも書いてなかったっけ。

 老人が増えて行く問題… 逆ピラミッドの人口の形、そんなところも彼女は考えて。

 おむつをされたり、自分で排泄の処理もできなくなった場合、それは人間の尊厳に関わるのではないか。生死について考える「哲学」のようなものをもって、夫々が、ボケる前にしっかり考え、哲学をもって、自死をするというようなことも、要するに大切なのではないか。それ以外に、この老人過多の現象問題は、解決をみないのではないか?

 そんなことが書かれてあったか、と記憶する。も一度、本が届いたらチャンと再読するが。

 むろん池田さんは、自殺を推奨していたわけではないだろう。生と死を同列とした老荘思想も入っていた気がする。いのちとは、生と死があって、初めて生命である、というような。

 しかしほんとに、笑ってしまうほどカゲキなことを池田さんは書いていたと思う。

 いや、でも、ほんとに彼女は考えていたんだよ。そこから絞り出して、ほんとに血が滲むように、それを文章化していたんだよ。そんな池田さんが、おれは好きだな。

 冷酷な人じゃないよ。優しい、素敵な人だったと思う。勇気のある人だったと思う。

 だからこっちも、勇気がいるんだよな、読むのに。

 ソクラテスについての本は、ほんとに考えさせられたし。でも読むのを止めることはできなかった。大切なことが書かれていたはずだ。だからこっちも、疲れ果てるほどに考えて、読むことができた。

 池田さんは、ほんとに「客観視」した人だったんじゃないか。「自分とは何か」を考え続けただろうし、そこからもちろん「人間とは?」になったろうし(他者と自己との関係から、それは同時進行だったかもしれないけど)、ヘーゲルやら何やらもしっかり勉強して、自分の哲学を文章に開示したんだろうと思う。

 いや、開示したから、哲学になった。考えるだけなら、みんな哲学者かもしれないからね。

 いやしかし、池田さんは… もっと生きて欲しかった。老年になったら、どんな「人間自身」になっていただろう。どんな文章を書いていただろう。

 池田さん、悪いけど、おれ、あなたに似ている気がするんだよ。だから読むのに抵抗があるんだけど。でも、あなたの最後のエッセイだ。しっかり、読みたいよ。