「荘子」にあったな。
「ああ、桑戸よ桑戸よ、お前は真実の世界に行ってしまったが、われわれはまだ残ったままだよ。ああ」
無から来て、無に帰る。そのあいだの束の間が生だとしたら、あの無は全く真実だろう。
今ある生。すると、ここは何なのだろう?
無から生まれ、無へ死んでいく。
そのあいだの、ここは。
生まれる前の。死んだ後の。
あの世界は、真実の世界だろう。
無でない、ここは、有の世だ。
ここに肉体があり、物がある。
それが、すべてなんだろう。
それだけが。
それだけが。