ショート・ショートのようなもの

 出生の秘密?

 私の両親は17年間育てた長兄を、心臓疾患で亡くしている。
「もう、たいへんなショックを受けて、ミツルちゃんのお母さん、毎日泣いてたのよ。
 池袋のデパートのエレベーターの中で、乳母車に乗って泣いていた赤ちゃんがいたの。
 親がいなかったから、ミツルちゃんのお母さんが、『わたしの子どもです』って引き取ったの。
 それがミツルちゃんだったのよ。」
 まことしやかに、幼少時、遊びに行った近所の酒屋のおばさんから、聞いた話。

 何も考えなくても、生きていける。
 何か考えても、生きていける。
 こう生きたらいい、というものなど、ない。

 古い価値観は、然るべき分別ゴミ収集日に合わせて捨て去ろう。

「人のふり見て我が身をなおせ」
 ── こんなことしてたら、大変だ。我が身など、いくつあったって足りゃしない。
 人は人、私は私、すべて、そこから始まるべし。

「後悔先に立たず」
 ── 至極当然。だから、何だというのか。
 後悔恐れて無難な道行くことこそ、まことの後悔なり。

「光陰矢の如し」
 ── そんなこたぁ、ない。時間は時間として、確実に流れるのみ。
 矢は、放たれた先に向かうのみ。時間は、どこにも、向かいはしない。
 時間に、早遅の狂いなし。

「仏の顔も三度まで」
 ── 三度ほどの顔で、仏でいられなくなる奴など、こちらから御免こうむりたし。

「嘘つきは泥棒の始まり」
 えっ。

 解せぬ、「祝いの言葉」。
「小学校、御入学おめでとう」
 あのね、誰だって入学できます。
「御結婚おめでとう」
 ありがとう。
「お幸せに」
(ナンテ、ムセキニンナ、オコトバ)