身体「なかなか不安定じゃないか。」
精神「いつものことよ。秋だし、空も、綺麗になってきたし。」
身体「もう、あまり飲んでくれるなよ、アルコール。」
精神「ああ。ひとりでいる時は、やすむ。飲む気にならんのだ。」
身体「お前は、破滅的な人間ではないはずだ。S君にも言われたろう。それにオレは、お前を生かすために、ここにいるのだ。オレを痛めつける行為はやめとくれ。」
精神「悪いね、いつも…。」
身体「タバコも、吸わないでほしいのだが。」
精神「いや、これはやめられそうにない。すまない。」
身体「お前は大病を患ったことがないから、オレのありがたさを知らないのだろう。」
精神「いや、知ってるつもりなんだが…。そろそろ、来るかい?」
身体「内臓Aと器官Bが、だいぶ不平を言っているよ。」
精神「わかるよ。ほんとうに申し訳ない。ところで、オレは、何なんだろう?」
身体「お前は、言ってみれば、お前自身、つまり、お前という人間そのものだ。」
精神「じゃ、きみは?」
身体「オレは、お前という人間を生かすために、この形をしているだけのものだ。
そしてお前は、お前自身を生かすために、生きているのだ。
お前が接する人、お前が感じること、お前が愛するもの、それらはすべて、お前を生かすためにある。
煩悶し、苦悩し、死ぬためのものでは、けっして、ない。」
精神「それら、つまり、まわりのものたちは、元気なのだろうか? ぼくは、まわりの影響を、すぐに受けてしまうんだ…」
身体「まわりの影響は、オレが受け持つ。お前は、お前が、お前であることを維持していけ。どうせ、オレがいなくなるまでのお前なんだから。」
精神「しかし、きみは身体という物体として、灰になっても、この地球に残るだろう。いなくなるのは、ぼくではないか。」
身体「同じことだよ。きみはオレであり、オレはきみなんだ。」
精神「ぼくの灰が残ってく…。じゃ、この地球も、ぼく自身なのか。」
身体「そうだよ。だから、戦争なんかやってる場合じゃないんだ、実際のところ。兵器が、爆撃が、どれだけ地球全体の汚染に繋がってると思う?」
精神「握手しよう。」
身体「ああ。よろしく頼むぜ、きみ。」