嬉しかった、その後、私は「この人を死なせてはならない」と思った。
一緒に死のうなんて思わなかったね。どうしてか。一緒に生きて行きたい! そう思ったよ。
あんな気持ち、初めてなったよ。恋… 好きになったに違いないけど、恋とか、そんな軽い感じじゃなかったな。
「死なせちゃいけない」そんな気持ちから始まったんだ。私は、私の分身、分心、かな、もうひとりの自分を見るように、彼女に対し始めたんだ。
私の告白を彼女が受け入れてくれて、私はひどく重い気持ちになった。自分ひとりでも大変なのに、これからこの彼女も引き受けて、背負っていくんだ、みたいな気持ちになったんだ。
でも嬉しかったよ… 初めての恋人だったから。
実を言うと、彼女は、小学時代から私の「お見舞い」に来てくれた友達の一人、K君の恋人だったんだけどね。
でも私には、友達より、彼女の方が… 「一緒に生きて行く人」に思えてさ。
それからのこと?── うん、卒業してすぐ、セブンイレブンで働き始めたよ。店長が知り合いにいてね。私の家は板橋だったんだけど、店は川口だった。電車とバスで、一時間位かかったかな。毎日休まず、働いたよ。
「社会でやって行けるのか?」そんな不安、なくなったね。というのも、私はお客さんのウケが良く、自分で言うのもナンだけどさ、店長とかパートのおばさん達からも、きっと良く思われていたんだよ。
商品の発注とか売り上げの計算、本部への報告書なんかも任されてね。いや、仕事、楽しかったよ、ほんとに。毎日が、もう充実の塊だった!
自分も、仕事ができるんだ── そんな自信がついたんだ。もう、自殺なんか考える余地もないよ。
そうだね、あの15歳の頃から、…大検を受けて大学に行って、大学を辞める頃まで、ほとんど自殺は考えなかったな。
何だろう、目的があったからだろうな。セブンイレブンで働いて、一年後位に学校に行きたくなって、定時制に行きながら働いて… そこで本格的なイジメにあって、退学したんだ。そしたらちょうど代々木の予備校が大検コースを開設して… 店を辞めて、予備校に行き始めて。
大検に合格したら大学にもうかって、…うん、死にたいなんて思ったことはなかった…かな。