恋をすること

 これは、確かにとんでもないエネルギーを放出するものだろう。

 恋をすれば、たいてい、大丈夫である。生きよう!とすることになる。自然に、そうなる。世界が変わる。前しか向けなくなる。あのひとのことを想えば、台風の目みたいな渦巻きが心の内に発生し、それに飛ばされるなり、楽しく踊るように回ることさえできる。

 生き生きと、日常を送ることができるだろう。あのひとのために、その自分のために、時計軸がそれを中心に回っていく。

 世界中に、あらゆる人が恋人を一人一人、持っていたとすれば、本気で戦争なんかするなと、いのちがけで反対するかもしれない。いや、それだけの熱情を持ち得るだろう。

 恋も、一つの狂気かもしれないが、おとなしい狂気だ。そんなに他人に、また自分は恋のために苦しい思いをするかもしれないが、他人にそんな、ひどい迷惑がかかるものでもない。

「人を思いやれる」「想像をたくましくする」最初で最後のような、本気の体験かもしれない。

 好きになったひとが、その時期時期で変わるなら、いつもそれが最初で最後の体験だ。

 恋、か!

 なんだか、懐かしい。