知り合いのお医者さんの奥さんが言っていた。
「夫婦生活はね、破れた障子を貼り直し、また破れて、また貼り直し、その繰り返しよ。うちにはね、いつも離婚届が置いてあるの。そのくらいの緊張感がないと(ダメ)、ねぇ(笑)」
まだ結婚したてだったぼくは、うーん、そういうものか、と感入ったものだった。
離婚届。
その後、実際に判を押したぼくとしては、実は婚姻届も離婚届も、たいしたものではない、というのが実感である。
ほんとに、そんな、たいしたことではない。
結婚とか離婚とか不倫とか、そんなものより、大切なものが、あると思えてならない。
ただ、緊張感はだいじかもしれない。あるていどの緊張感がないと、ダラケる。
キッチンの食器棚なんかに離婚届が常時置いてあったりしたら、「あ、ウワキはイカン」とか「このひとをだいじにしよう」とか、イイ感じの緊張感が芽ばえるかもしれない。
新婚の方々に、申し上げたい。離婚届、常備しましょう。
さりげなく、いつもそこにあるように。忘れてはならない、大切な何かのために。