時代

── ……… 何か誤魔化してる気がする。

── こういう対話式の形態がかい?

── いや、何だろう… 定点が定まっていないというか。重力がソッポを向いてる…
ここでもない、そこでもない、どこでもない、という感じなんだ。

── 病み上がりだからじゃないか? かなり頭痛、左側がひどかったね。
耐えきれずバファリン飲んだらケロリと治って。腰もまぁまぁになって。

── ああ… 何ヵ月かずっと続けてきた瞑想、半結跏趺坐して姿勢を良くして…
その態勢で瞑想をするのに自信がなくなった。
あの姿勢が腰に悪かったんだと思えて… 意気消沈してるんだな。

── 「良いこと」と信じてきたのに。
これからもずっとやって行こうと、日々の目標にしていたのに。
それがもう続けられないという絶望感…。

── でも瞑想なんて寝っ転がってたって出来るだろう?

── そりゃ出来るが…。
でも「やった!感」が無いんだな、寝っ転がってやったりしたら。
モーツァルトのミサ曲を一時間ぐらい聴きながら、ずーっと良い姿勢で動かずにいること。
その時間が終わった時、「やり遂げた!感」があったものだ。ああ…

── 姿勢を良くするのが身体に悪いはずないだろう。
長くやりすぎたんじゃないか。
時間を短くして、また始めてみたら?

腰は一番ストレスを受け易い部位だというし。
何も原因が姿勢だけとは限らないじゃないか。

── うん。精神的なものが大きいとは思うよ…
「書く目的」みたいなものもね…。
目的、目標が…
何か判然としない。
書く必然のないことを書いてる気がする。
言葉にする必要なんかないことを書いてる気がする。

── つまんないのかい? 書いてて…

── なんか誤魔化してる気がするんだ…
もう、何も書くことなんか無いんじゃないか。
もう、いいんじゃないか?… そんな気が、大きくて。

── なんかふわふわしてるんだな。
重心、中点、芯のようなものが、どこにもないような…
久しぶりにセリーヌも読み始めたんだけど、頭にうまく入ってこない。
上っ面をサーッと流れてく… 全然浸透してこない。

── こんな時はどんな歌がいいのかね?

── そんなお前の「振り」もわざとらしく思えるよ。
「無音の音」が一番いい感じだ…。
虫の鳴き声、庭から聞こえてくる…
無心の声、とでもいうのか。

これには癒されるよ。
秋だねぇ。まだ昼間は暑いけど。

── まぁ、こんな曲でもどうかね。
みゆきさんの曲だ。
途中で西城秀樹、泣いてるらしいよ。
なんで泣いてたんだろう。
歌に入り込みすぎて、極まっちゃったのかな…