── お前は「完璧主義」といわれたこともあったな。
いわれるまで、気づかなかった。
その「完璧」… お前が求め、やろうとしていた「完璧」とは何だったのかね?
── 身体が不自由になれば、あたかも以前は自由だったように思えるだろう。
頭の中に霞がかかり、ぼんやりとしか物事が考えられなくなれば、以前は鮮明だったと思えるだろう。
今がすべてなんだ。
いろんな過去を思い出し、いろんな未来が今お前の中を飛び交っているとしても。
── 今お前はそういう状態なんだね…
身体にガタが来て、以前はこうではなかった。
もう「以前」に戻れない。
この先も、あまり芳しくないように思えている。
そうなると、もう希望もなく見えるね。
今も、先も。
思い出すのは、悪いことばかりだ。
そして気力が無くなっていく。
目的がない。
生き甲斐、とでもいうようなものが。
執拗な暑さだけのせいではない。
体力の低下、気力の疲弊…
こういう時は、くたばってるんだ。
休ませるんだ、身体を。
そのうち、また時間が来るさ。
起きる時が。
時計じゃなくて。
それまで、くたばってるんだ。
何も、わるいことじゃない。
善悪なんかの「わる」じゃなくて。