「ところで友よ、男と女が一緒に生活するって、大変だろうな」
「そらそうよ。まったく異なる者どうしが、同じ場所で生活を共にするんだから! 食器の置き方、洗濯物の干し方ひとつで、殺傷沙汰にさえ発展するさ。それまで、全然違う環境で生きてきたんだし」
「些細なことが積み重なると、大きくなるからなあ。で、友よ、きみはうまく行ってるのかい」
「とりあえずケンカはしないな。おたがい、内省的なんだ。自己完結型夫婦、とでもいおうかな。心の戦いはあっても、実際のバイオレンスにはならないね」
「友よ、ぼくはあまのじゃくでね、ひとりの時はふたりになりたいと思い、ふたりの時はひとりになりたいと思うんだ」
「そういうもんだろ。ないものは欲しがれるし、あるものは、もうあるんだから」
「結婚を考えているんだが…。やめた方がいいかな」
「なんとも言えんな。きみが決めるべきことだ。自由だよ、自由!」
「友よ、恋愛は個人的だが結婚は社会的だ。責任が伴ってくるだろう? ぼくは、これ以上無責任になりたくないんだ…」
「幻想だよ。きみは、きみのつくった幻想に囚われているんだ」
「友よ、ぼくは自信がないんだ」
「幻想だよ。きみは、自分のつくった幻想に囚われているんだ…」