介護の仕事の頃(17)面接

 面接というもので、いい思いをしたことがない。いや、あるにはあったが、それよりイヤな思いをした方が強く、いい思いを押し退けてしまった。
 この「いい・悪い」を感受した心の活動を知ったことは、経験としていいことだったと思う。

 面接する側にはなれないし、なりたいとも思わない。
 いや、一度くらいなっていみたい気もするが、この自分がそんな立場になって人を「良・不可」と選別めいた評価することは、断じて自分がイヤな気持ちになるだろう。
 結局私は面接をする側にもされる側にも、嫌悪するのだった。

 2日前、とある場に面接に行ったのだが、この認識を新たにした。
 15分~20分位?の、初対面の他人どうしがかしこまって、何かを探り合うという時間。
 全く、何なのかと思う。それよりも、実際に現場に入って半日でも働かせ、その動きなりで判断する方が、採用する側もされる側も、両者にとってよほど納得のいく時間のように思う。
 その人となりは、5分ほどの面談でも分からないこともないだろうけれど。

 就業先での面接は、その後給料が発生するから、雇う側としても慎重にならざるを得ないだろう。
 でも、子どもが学校に入学する際の試験のような面接(面談?)、小・中学や高校は、一体何を基準に、人に対して評価を下しているのかと思う。

 2日前の話に戻せば、おそらく私は失敗したと思う。
「今まで2回、こういう仕事をされて、何が大変でしたか?」というような質問に対し、「スタッフどうしの人間関係です」と答えたかったが、
「たとえばAさんは『こうやるといい』と移乗の仕方を教えてくれるのですが、Bさんは『こうやるといい』と違うやり方を教えてくれます。Aさんのやり方で仕事をしていると、それを見たBさんがムッとしたりします。そういうところが大変でした」
 具体的に言ってみた。

「ああ、そういうところは、ウチにもあるな…」と面接官。そして、「うまく立ち回れること、できますか?」と訊いてきたのだ。
 私は、「うまく立ち回りたい… いや、できない…」と、うつむいてしまった。

 座る私の両サイドには、この場を紹介してくれた派遣会社の社員が2人座り、長テーブルを挟んで、向こう側に面接官2人が座っていた。
 それまで、一見順調そうだった面談が、一気にシラケたような雰囲気になった気がした。
 その後30分ほど、私だけのために、職場見学ということで、職員が現場で本当に丁寧にあれこれ教えてくれた。これには全く、感謝の念しかない。

 まあ、縁がなかったということで。週明けに採用不採用の通知が来るそうだが、もう過ぎたことだ。
 まったく、疲れ果てた感じになって帰宅して、この2日間、寝込み気味だった。