「広告代理店は、スポンサーの製品を売ることにのみ関心があるのであって、顧客たる可能性をさまたげるようなドラマを欲しない。
したがって、買い物好きの視聴者に下向いた拍子(ダウン・ビート)のテレビ番組を見せて、その購買意欲を冷やしてしまうようなことは、スポンサーの望むところではない。
そこでテレビ番組は、つねに幸福で明るい上向きの拍子(アップ・ビート)だ。」
テレビ・ドラマの作家らしい、苛立ったアメリカ人がそう書いている、と、大江健三郎は書いていた。
そうか、と思った。
やたら「前向き」だけが「良い」とされ、マイナス志向が眉間にシワ寄せられ、首を振られるのには、そんな金銭に絡んだことが、強く根を伸ばしていたというのだろうか。
なんと胡散臭いアップ・ビートか。
- 、横棒がなければ、|、縦棒もなく、すなわち「+」になれないというのに。
前向きになる、元気になる、それは、金銭には無関係のところのものだろう。
もしかして、テレビと同様、見る者の購買意欲、それを駆り立てるために、投稿サイトやブログ、個人の書く場所に、広告が張り付けられている?
きっと、そうなんだろう。
ダメじゃん、オレ。スポンサーに望まれないじゃん。