初恋のきっかけが自殺だった、というと奇異に映るかもしれないが、実際のところ、そうだったのである。
彼女は「高校に進学して大学に行って、就職して結婚して…」
と、まるで決まりきっているかのような自分の未来を思い描き、つまらなくなって死にたくなっていたのだ。
私は学校に行っていなかったので、中卒後の自分の未来が見えず、はたしてこんな自分がこの世の中で生きていけるのかという不安ばかりで、やはり死にたくなっていたのだ。
だが友達はいたのである。
で、その友達を経由して彼女と知り合い、「こんなみぢかに自殺を考えていた人がいたのか!」と(彼女もそれまで私の友達数人とうちに遊びに来てくれた一人だったのだ)私は嬉しくなって、告白したのだ。
心から君を愛している。
私は、彼女と一緒に生きていこうとさえしていた。
自殺の考えなど、霧散していた。
それまで私は自殺を考えていた人をみぢかに知らず(もちろんそんな考えは日常会話になかなか出てこないのだ)、だからまるで自分はひとりぽっちのような気になっていて、しかし彼女が自殺を考えていることを知って、あぁ、オレひとりじゃないんだ、と感じ、その孤独感からの開放は、私に大袈裟ではなく生きる力を与えたようなものだった。
死にたいと思っても、なかなかそれを口にできない情況が、彼女にも私にもあったのだ。
死にたいなんて、弱者の吐く言葉。
そんな気持ちは押し殺し、ガンバッテいこう。
── そんなことは分かっている。
私はただ、言ってもいいと思うのだ、死にたいのなら、死にたいと。
弱い強いではない。がんばるがんばらないではない。
自分に正直に、人とつきあっていくということ。
そこから、私は、恋人になれた。
14歳の夏。