昼前まで就寝。そして罪悪感を伴う目覚め。
家人の、何かごそごそする音がする。ぼくは寝床に横たわったまま本を読む。寝巻きのまま。着替えもしない。
─── 昼前だというのに、だらしのない人間。
実際だらしがないのだから、そう思われても仕方がない。何をカッコつけようとしているのか。
午後になれば、Gパンにはき替える。上は、寝ていた時着ていた長Tシャツのまま。パソコンに向かう。
家人が窓を開ける。窓を開けられると、寒い。家人は、ぼくの吸うタバコの匂いが気に入らない。上からトレーナーを着る。
パソコンの前。空気清浄機。アイスコーヒー、タバコ。
昨日、ぼくの職場の友達の来訪(6時間位ずっと酒を飲んでいた)で、すっかりストレスが溜まったらしい猫と家人。
猫はニャアニャア言い、家人は無言を貫く。玄関の下駄箱の上には、ビールの缶が10本くらい並んでいる。
───まったく、こんなに飲んで…。
もう飲んでしまったのだから、どう思われようが構わない。
いつのまにか夕方になる。日が暮れるのが早くなった。1日24時間は変わらない筈なのに、1日が短くなったよう。
家人が、一緒に買い物に行きたそうな素振りを見せる。ぼくは、「行かない。」家人がひとりで出て行く。
ぼくは風呂で半身浴して読書をする。汗をかく。いい汗だ。
風呂あがり、豚汁を食べる。野沢菜も切って食べる。わさび味の野沢菜のほうが美味しいとおもう。
ベランダの外は夕暮れだ。急に、せつなくなる。なんという1日! ぼくはまだ、1日を使い切っていない。
バンテリンを買いに行かねば。バンテリンを。
明日から、仕事の持ち場がキツくなる。ちょっとした勝負なのである。
居間のこたつで薄目をあけてねている家人に声をかける。
「行く?」「行かない。」
マツモトキヨシでバンテリンもどきを買う。(バンテリンは高かった。)
100円ショップで風呂掃除の時に使うスリッパと、食器洗い用のスポンジ(5枚入って100円だぜ)を買う。
スーパーに行ったら、店先で焼き鳥屋が屋台を出していた。
米、卵、納豆、お茶などを買って、焼き鳥を買う。
「すぐそこのFってスーパーの店の前にも、焼き鳥屋さん、あるんですけど、あそこよりこっちのほうが美味しいです。」
ぼくが焼き鳥屋に笑って言う。
「ありがとうございます。」主人が笑顔で答える。
「浮気はダメよ、って、他のお客さんにも言ってるんですよ。」
奥さんが笑って言う。
「いや、ぼく、1回だけですよ、1回だけ。」
何を弁解してるのかね。
ママチャリの後ろに米の袋をヒモで巻き付け、前のカゴも買い物袋。
カゴに入り切らないので、ハンドルの片方にも提げる。
午後6時半。もう、真っ暗だ。
ぼくは、白夜の国に住むべきなのかもしれない。そうだ、そうするべきだ。
夜はいやだ。朝が来るから。しかし白夜の国でも、朝は来るのだ。
逃げることはできない。たとえ世界の果てに行こうとも。
出口なし。 I cannot find an exit .
そうだ、死ぬまで、出口なんか、ないのだ。
パラダイスは、自分でつくるものなのだ。世界の果てに行こうとも。