顔回は孔子に面会して、旅立ちの許しを乞うた。
「どこへ行くつもりかね」
「衛の国へ参りたいと存じます」
「何のために行くのかね」
これに対し、顔回は答えた。
「私が聞くところによりますと、衛の君主は、年も若く、独断の振る舞いが多くて、軽々しく国中の民を使役し、しかも自分のあやまちに気づくことがありません。
また、軽々しく民を使役して死に至らしめ、国中に死者が満ち溢れ、沢の草むらさえ焼けて枯れてしまう始末です。
ですから民はどうすることもできず、苦しんでおります。
以前、私は先生から教えて頂いたことがあります。『治まっている国からは立ち去り、乱れている国にこそ行かなければならない。乱れた国に行けば、医者の門に病人が群がるように、救いを求める人々が集まってくるだろう』と。
私も先生から受け賜わった言葉を元にし、その実行の方法を考えたいと思います。そうすれば、きっと衛の国の病気もなおることでしょう」
── 顔回は、とても純粋で、愛すべき、愛しい人物だ。孔子が、一番愛した弟子といわれている。たしか、病気か何かで夭折したのではなかったか…。
孔子は、荘子の物語によく登場する。えっ、なんで孔子?と思ったが、荘子(を書いた人たち)が創作した物語の登場人物として描かれている。
いや、ほんとに顔回は可愛い。「カラマーゾフ」のアリョーシャみたいに、ほんとに純粋だと思う。こういう人物に、ぼくは弱い…
ここでも、顔回は衛の国で苦しんでいる人たちを助けたいと、師に出発の許可を求めている。