キルケゴール

 キルケゴールは私に「書け」と言って来る。
「愛のわざ」後半には実際そう書いてある文もある。他者に媚びへつらうように書いてはならぬ。共感など求めるものは、どんどん自己から離れていく。ほんとうに考えることにならない。
 欺瞞、あざむき、虚栄心、これらなくして立てないものは、虚偽にのみ生きているものである。虚偽から書くものである。自己の内へ内へ向かうこと。書くこと、それはここから始まり、そして、そうして生きて行くことにあるのだ。
 俗世が、大衆が、何と言おうと、何と思われようと、どう感じられようと、「そんなこと書いても誰も読まないよ」と親切な進言を頂戴しようと、きみはそれらのものに惑わされてはいけない。
 それらの「この世」、「かれら」をつくっているのも、ほかならぬきみ自身なのだから!と。