ようやく先が見えてきた。
読み始めてから、1年近くかかっている。
「頭・顔を朱色に染め、肛門にキュウリを突っ込んで縊死した友人」がいて、主人公も、頭部に悪性の腫瘍のようなものをもった赤ン坊の誕生の現実に瀕し、ほとんどアル中になった妻ともども、出口のないデスペレートな日々を送っていた… というのが、この小説のはじめであったはずだった。
主人公の弟がアメリカから帰ってきて、「郷里にみんなで帰ろう」と言う。「このままじゃ、ダメになるよ、新しい生活をはじめよう。」
「新しい生活」、この言葉によって突き動かされた主人公、妻と、弟の仲間たちと、郷里へ行く。
万延元年の一揆、その一揆を主導した、主人公の曽祖父の弟。
主人公の弟は、その曽祖父の弟のように、一揆を、その郷里で試みる。
一揆は、まるで成功したかのようだった。だが、主人公の弟は、主人公の妻と性行為をし、さらに、白痴だった妹とも、かつて性行為をしたことを主人公に告白する。それで妹は自殺したのだ、ということも。
… この物語のはじめと、現在のおわり間近、この小説は、一貫して、一定の世界から離れない。
足を踏みしめ踏みしめ、原稿、文字、言葉に土着、とことん作者は土着し続けている。
物語の、はじめとおわりにある、「中」、ここら辺りは、もう、読んでいて苦痛だった。
やっと、この物語を読みはじめた頃の勢いのようなものが、ぼくに、蘇りつつあって、あ、このまま、読み終えられるな、と、感じている今日この頃。
途中で投げ出すことができない小説だった。