ひと夏の体験

 一昨日、道を歩いていたら、太陽が私を照らした。さんさんと、熱い陽射し。浴びながら、でも、あ、これは残照だと感じた。

 太陽さん、この国の「夏のお仕事」終えようとしてる。そんなふうに感じた。

 いつか感じた「感じ」であったからだ。

 この「感じ」は、最初感じた時、私はよく分からなかった。「よく分からない」が最初だった。それが記憶によって「分かる」ようになった。

 あ、これはあの時の、と。

 でも季節は変化している。ひと夏を見ても、暑さの質、長さの質は変わっている。いつまでも私は、あ、あのときの、に囚われているわけにはゆかない。

 が、その感じた一瞬、その一瞬、この一瞬は永遠なのだ。私だけの、ほんとうのことなのだ。

 後生大事に、とっておくよ。忘れるはずもない。この私の意思に関わらず、私の身体が感じ、私に教えてくれた、私だけの体験であるのだから。

 誰かに渡したいけれど、渡せるものでもないらしい。だからせめて、こんなことでも、せっかくだから書いておこうかな。