朝、換気扇の下でタバコを吸っていると、壁の向こうから「ケキョケキョ」と声がした。
ナンテンが植えてある方向。小声で、一生懸命何か言っている。
ウグイスだ! 家の庭に、来てくれたんだ…
部屋に入り、窓を開けると正面に椿がある。
こんもりした葉々の中に、小さな鳥。二羽のメジロが一生懸命、花をくちばしでつついている。
「ピーッ」と声をあげ、飛んで行ったのはツグミか。
川のそばでは、青い鳥も見かける。ルリビタキという、綺麗な青い翼を持つ小鳥。
川面には、カモが二羽。サギも、川を見つめて立っている。
ヒヨヒヨ。チチチチ。窓の向こうから聞こえる、小鳥の声だけで、幸せな気持ちになる。
しかしこのウグイス、本人も「ん?」という感じで鳴いている。
戸惑いながら、完全な「ホーホケキョ」を目指している様子。
誰に教わるわけでもなく、これでもない、こうでもないと、「ホー、ホケケケ?」と、ほんとうにがんばって鳴いている。
春は近い。布団を干せば、夜も太陽の匂いに包まれる。
陽だまりの中で、何も思わず、縁側で日向ぼっこをしていたい。
風もなく、穏やかな週末。何を苦しむこともない。
お寺から、鐘の音が聞こえる。
ホー、ホケケッ、といいながら、きんぴらごぼうと切り干し大根をつくった。
ゆっくり、生きよう。