恥は一時

 そして今日、要するにわたしは、いわゆる女性用の下着を買いに行ったのだった。
 昨日、奈良市内の一定区域を走る「ぐるりんバス」に乗って、彼女と某駅まで行き、百貨店みたいな所でわたしはチノパンツを買った。

 だが、わたしは足が短いので裾上げをしてもらわねばならず、その出来上がりが翌日、つまり今日の12時なのであった。
 昨日彼女はいわゆる、下着を購入していた。
 その下着が、なかなか良かったらしい。

 で、今日またわたしがチノパンツを受け取りに行くので、ついでに同じものを買ってきてほしいと言われたのだ、
 その、いわゆる下のほうの下着を。
 わたしは、ちょっと困った。
 わたしは、男だからだ。
 しかも、その某百貨店内にある「無印〇品」というテナント内は、どうも女性客が多そうなのだった。

 まぁ、愛する彼女のためであるし、何もわたしがはくわけでもないのだし、もし変質者として警察に通報されたら、「証言」として彼女に電話に出てもらって、「私が頼みました」と言ってもらおう、と覚悟を決めて行った。
 いざ、現場へ。
 平日の昼下がり、やはり主婦っぽい女性客が多かった。
 いや、女性しかいなかった。

 救いであったのは、その下のほうの下着が、いわゆるバーゲンセール的な、棚の上に無造作に山積みに置かれて、主婦たちがワレ先にと群がるような、いわゆる「生」のままの、包装されていない状態ではなかったことだった。
 コロナ禍で、そのような売り方はしないだろうけれど。

 ちゃんと、薄いプラスチック紙のようなものの中に、それは入っていて、「?」マークの形をしたフックが付いて、吊り棚にぶら下がっている状態が、ありがたかった。
 ああ、これだこれだ、と、買うべき商品の特徴が書かれたメモ用紙を見ながら、その吊り棚に手を伸ばす。さいわい、そのコーナーには女性客がいなかった。(避けられた?)

 昨日もらった、チノパンツの裾上げの「お客様控え」を持ち、片手にその商品を持ち、レジへ。
 レジには、客が5、6人並んでいた。
 4台位あったレジの、奥の方から、「こちらへどうぞ!」と声が。

 その商品、パッケージの裏側からは、中身が見えない。
 バーコードも裏側に付いている。わたしは裏を上にして、レジに置いた。
 そして「お客様控え」をレジ嬢に渡し、「できてますか」と聞いた。
 裾上げされたチノパンツと、もう一つの商品が「無印〇品」と大きくロゴの入った紙袋に入れられた。

「〇〇カードはお持ちですか」と昨日も聞かれたので、今日もそれだろうと思い、「ないです」と答えたのだが、レジ嬢は「レジ袋はお持ちですか」と聞いたらしい。
 わたしの聞き間違いだった。
 だが、レジ袋は有料だが、この紙でできた手さげ袋は無料であることを初めて知った。
 リュックの中に入れる用意をしていたが、レジ嬢は丁寧に紙袋に入れてくれた。

 そして彼女は、終始ニコニコと、わたしに対応してくれたのだった。(笑われていた?)
 重要な仕事を終えた気分になったわたしは、実に晴れやかな気持ちで某百貨店内を出た。

 どうもすみませんでした。

(注/その後、手さげ袋、有料になったみたいです。2023.1.27.)