介護の仕事の頃(19)介護ジプシー

 どうして、我が出てしまうのだろう。
 どうして人の意見、自分と異なる人の意見を聞き入れられないのだろう、どうして自分は正しいと思ってしまうのだろう。

 こんなことを書くのも自己正当化だし、一方的なものだ。相手には、相手の考えがあったはず。それが、こんなひとりで書く文の中では、全く反映されない。ひとりで勝手に書いているだけだ。
 でも、そのまま、当時書いていたことといえば──

「いやはや、ムリ!
 派遣経由で三軒目の特別養護老人ホーム。ユニット型。
 東西分かれての2フロア、西に配属。
『今までの経験もあるでしょう。細かいことは言わないし、好きなようにやって下さいね』という感じで、でも要所要所は確実に見ていて、教えてくれる、ありがたいリーダーに当たった。
 久し振りに(この人について行こう)と思わせる人だった。

 だが、東のフロアはもちろん別の人が指導者で、不意に来ては『そのやり方はダメ、これはダメ、それはダメ』と、とにかくダメダメの連続に終始した。直属のリーダーから教わったやり方をしても、ダメだった。
『ムリだ』と痛感したのは、接遇を否定された時だった。『最後にを付けるのはやめて下さい。だよとか、タメ口はダメ。利用者さんはお客様です。コンビニの店員からタメ口をきかれたら、どう思いますか?」
 その数時間前、『あまり丁寧な言葉使いだと、距離が縮まらないですよ』と、私のついて行きたいリーダーから言われたばかりだったのだが。

 いや、はっきり言って、今までの2つの施設で私は『利用者さんとのコミュ力がすごい』と評価を受けていた。ここに、妙な自信めいたものを持ってしまっていた。
 とにかく現場に余裕がない。もし「諸悪」があるとしたら、これが最たる原因だ。
 今回の施設は特に、人がほんとうにいなかった。事務室長やケアマネージャーがフロアでぎこちなく配膳などをし、立ち働いている姿を初めて見た。

『遅番の翌日、早番もあります。今は週4日でも、5日もできるでしょ?』
 ダメ出しをこれでもかとしてきた、くだんの上司に訊かれる。
 思わず、『いや、5日はキツいかなと思っています』
『でも、隔週で5日とかなら大丈夫ですよね?』
 いや、もうムリ。
 ギブアップ。
 派遣会社に電話。事情を話し、『わかりました。また違う施設を紹介させて頂きます』

 ほんとうに、人が人をつくる。その場をつくる。東のリーダーが、施設内ピラミッドで上部に在る事実。立場上、言わなければならないこともあるだろう。それによって、職場全体がイヤになってしまう、私みたいな従業員もいると思う。そして辞め、人手がまた不足する。
 ただでさえ、しんどい仕事内容。せめて、同じ仕事をする者どうし、和気あいあいとまででなくても、仲良くやれないものか… 自分がやれてない。どの口が言うか。