狂った時代においては

 たとえば戦争── 人間らしいといえば人間らしいといえるということ。
 セリーヌは、この絶望を描いた。
 この「夜の果ての旅」、まだその旅をともにする途中だが、およそ絶望の連続である。
 狂った世界、そのなかにあっては、否、狂っているとさえ確言できない、ただの流れ、しかし圧倒的な、抗うことのできないような流れのなかにあっては…
 それでも、生きていくということ。それでも・・・・

「この小説は想像である」とセリーヌは最初に書いているが。
 おそらく自らの戦争体験、それと想像が加わってのものであろう。
 醜悪な、醜い人間の実体を描きながら、そこから目を逸らさない。
 勇気のある作家だったと思う。我慢強い人だったと思う。
 彼は書かざるをえなかったのだ。
 本物だったと思う。