翌朝、大宮のホテルを出て、板橋に行って、お墓参りをした。
どうせなら兄、兄嫁とも会いたかったが、コロナが落ち着かないと、ためらわれる。
もう二年以上、会っていない…
墓地の塀沿いに、大きな、白と紫のモクレンの花。いっぱい咲いていて、ほんとに綺麗だった。
父94、母88、長男18、祖母、祖父…
お墓の側面に、亡くなった年月日、年齢が彫られている。
知らない名前もある。
この人は、誰なんだろう。
左隣りはどなたのお墓もなく、サラ地の状態。
あとはびっしり、〇〇家の墓、と並ぶ。
区画整理された、死後の住まい…
人間は、死んだ後も、近所づきあいがあるのかなと思った。
兄がお参りでもしたのか、サカキ?が、お墓に固定される花入れのコップに。
まわりのお墓にも、黄色や赤の花が。
こどもの頃、両親と来たとき、「しばらくぶりですねえ」とか言って、母がお墓の上から、杓子で水を掛けていた。
その母が、ここに眠っている。
昭和〇年、建立、と、父の名が、お墓の裏には、彫られていた。
おムコさんに来た父が、しっかり働いて、「建て直し」たんだ。
立派なお墓だと思う。
父も、立派な人だったと思う。
それにくらべて、このオレは…。
大迷惑をかけたことを、いつも思う。
すると、自動的に泣いてしまう。
父母の死が、悲しいのでは、きっと、ない。
父母が、生きているあいだ、何も、できなかったような自分が。
祖母にも、僕は、ひどい子どもだった。
手桶の水を、杓子で取って、お墓の上から水を掛け、すみませんでした、ありがとうございます、ぶつぶつ言って、独り言。
しかし、ほんとうに、涙は不思議と思う。
悲しい、は、あるけれど、怒りとか、悔しさとか、わけのわからない感情が。何か胸のなかに詰まったものが、溢れるのかな。
プッ、と、最初に泣くと、あとからどんどん、あふれてくる。
ああ、ひとり、だからだな。
いつも、誰かと一緒に来ていた。
ひとりで、こうしてお墓に向かってるからだ、と思った。
たぶん兄があげた、お線香が、半分、燃え尽きないで残って。
お墓には小さなお線香の家があって、石の屋根もあるけれど、雨でも降ったのか、シケっちゃったのか。
ライターで、じーっとつけた。
ああ、終わった、終わった。
お寺の入り口に、チャンとした喫煙所。
タバコを吸って、落ち着いて、お寺の歴史みたいなのが書かれた立て札を読んだりする。
心の問題だよな、と思う。
お墓があるということ。
前、ここに来た時、幼なじみのKちゃんと、40年ぶり位に会ったっけ。
あの、一緒に入った喫茶店はよかった。
私鉄のほうに行って、街並みを懐かしみながら歩いたが、あの喫茶店はもう無くなっていた。
コロナの影響か… 全席喫煙可の、喫茶店らしい、いい喫茶店だった。
JRに戻って、新幹線の切符を買い、赤羽駅へ。
ツレアイと無事合流し、また電車に乗って、東京駅。
京都に着いて、奈良に着く。
僕は、何のために生きているんだろう、と、やっぱりおもう。
ずっと、おもってきた、ともおもう。
たぶん死ぬまで、おもおうとおもえば、おもうんだろうな、とおもう。
これでよかった、なんて、納得できることなんて、ないような気がする。
しかし… また、行こうと思う。
埼玉、東京。奈良に着いて、人が、少ないなと思った。
鹿はいてくれるけど、人、対人関係で、あんまりイイこと、ないナ。
ごみごみした都会のほうが、そのぶん人に気を遣って、繊細な感じの人が多くなるのかな。
とりあえず東京に育って、イナカ?のズーズーしさみたいなところが、なんか、なぁ。
となりの芝生、となりの芝生。
ないものねだりの、子守歌。
パラダイスは、自分でつくろう。
三泊四日の、関東滞在記、でした。…