日常から

 昨日スーパーへ行く途中、曲がり角を曲がった。よく車の通る道から、路地へ。
 すると、「キヨシさん?」と声を掛けられた。自転車に乗っている、40代?位のご婦人。
 5、6メートル距離がある。私は路地、彼女はその曲がり角のところ。
 振り返って見た。こっちを見ている。マスクをして、髪も長く、目線はこっちを見ているようだったが、私はキヨシではない。彼女を見ながら、首を傾げた。彼女は自転車に|跨《またが》ってこっちを見続けているようだったが、とにかく私はキヨシではない。そのまま歩き続ける。と、20秒ぐらい後、うしろから「ハラキヨシさんではないですか?」とまた声が聞こえた。
 また振り返ると、くだんのご婦人。路地に、ちょっと入って来ている。
「いえ、違います」
「あっ、すみません!」苦笑しながら丁寧に頭を下げられた。「人違いでした、すみません!」
「いえいえ、どういたしまして」私も笑ってお辞儀した。
 なんか面白かった。ハラ・キヨシさん… いい名前だ、腹黒くなさそうな、いい人そうな名前。
 しかし、よっぽど似ていたんだろうな! こんな、みごとに間違えられるとは。
 ねずみ色のパーカーにジーパン、帽子を被ってリュックを背負って、こんな格好の男、日本中に掃いて捨てるほどいそうだ。

 いつか埼玉の家で庭の掃除をしていたら、町内(市内?)アナウンスがどっかのスピーカーから大音量で流れ始めた。
 ── こちらは、〇〇市役所です。〇月〇日の夜から、〇歳の男性が行方不明で、探しています。身長165センチ、坊主頭で、黒いリュック、ジーパン姿で… 心当たりのある方は…
 その行方不明者の特徴がまったく私と同じで、あれ、オレ捜索されてるのかと思った。

 似ている人はほんとにいる。子どもの頃、家の近くの路地で、近所のナカムラさんそっくりなお爺さんとすれ違い、「こんにちは!」と私は挨拶した。が、その人はナカムラさんではなかった! もちろん挨拶も返されず。
 そのお爺さんは、すれ違ったあとも(???)というように口をポカンとあけながら、こちらを振り返り振り返り歩いて行った… 恥ずかしかった。

 とりとめのない話。
 とにかくハラキヨシさんと一度会ってみたい気がする。