他との関係は自己との関係

 花を見て、涙する。人の笑顔を見て、一緒に笑う。誰かに怒られてしょんぼりする。
 誰もいなくて淋しくなる── これらの感情は、その状況、その対象と自分との関係に端を発し、自己の内から外へこぼれ出す。

 アスファルトの裂け目から咲く花を見た時、わたしは瞬間的に涙ぐむ。
 この時、わたしはこの花の未来を、ほとんど咄嗟に、無意識に想像しているのだ。

 このはかなさを感じる一瞬のうちに、わたしはわたし自身を、さらに、この世のありとある全てのものも、いずれ見えなくなることを、実感、体感する。

 それは一瞬の、体験するような実感、体感。

 誰かとの関係の中で、あるいは関係のない関係の中で、この花と同様のものをわたしは受ける。
 そこに在るものから、わたしは何かを感受する。

 その「感受した自己と自分自身との関係」が始まって、「世界が存在する」。

 そこに在るもの── 人間、灰皿、鳥や虫が、何もいわず、何もわたしにしてこないとしても、それらから何かを感受した自己と、その自己に対する自分自身との関係が生ずる。

 他との関係は、自分自身との関係を持つ関係。

 ひとつひとつの物、ひとりひとりの者、各々に、自己がある。
 自己が、各々のそれ自体にある存在。

「だから、掛け替えのない自己を持つ各々の存在を、傷つけるようなことはしてはならない」

「この世に在るもので、排除、排斥するべきものなど、何一つ存在しない」…