おまえは、一生を愉しめたのかい?
── 一生? 一生って、何だい?
生きてた… てる、かな。まぁ、死ぬまでの時間のことだよ。
── うーん。意味がわかんない。
そりゃ、生きてる(た)意味なんか、わかんないだろうけどもさ。
── いや、あなたの言葉の意味がわかんない。
そうか、生きてる(た)意味なんかじゃなくて、ぼくが何を言ってるか分かんない、ってことだね?
── …。
うん、いいよ。わかんないよね。ぼくだって分かんないんだ。
きみはどう思っているのかなぁと思って、訊いただけだよ。
そう、わかんないのが、ほんとだね。
ほんとのことなんか、誰も分かりゃしないんだ。
でも、みんな分かったように生きてんだ。
生きてるなんて、気づかないのが、ほんとに生きてることかもしれないね。
── …。
うん、いいよいいよ。気にせんでくれ、たいしたことじゃない…。
── …。
きみは、ほんとに生命そのものだねえ! きみのことを考えるぼくに、こんな自由を与えてくれている…