眼(2)

 時にきみは、その眼を厭わしく、潰してしまいたいと想う。
 これがあるからいけない、これがあるから、苦しむばかりだ、と考えて。
 まったくそうだ、その通りだ。

 その苦が感じられるのは、苦を感じるものがあるためだ。
 そのものを消してしまえばいい。
 その通りだ。もう一つの眼、うなずく。

 その眼のとりまき、手下ども、一つ目だらけの胴体もうなずいている。

 そして手足は眼のしもべとなって活動をはじめる──
 その眼自体へでなく、その眼に入る対象に向かって。

 そうして隣国へ侵攻を試みるものもあれば、隣人へナイフを向けるものもある。
 それを単なる悪と断じるものは、一つ目の怪物と変わらない。

 それを悪としか断じない 一つ目おばけ
 寄り集まって、あれが悪だ、あれが悪だと糾弾する

 これが善だ、これが悪だと決めつける
 そう決めた自分の中を探ろうともせず

 その眼に映った外界のものだけを
 いかにもわかったふうに断じてばかりだ

 斯くして、人類史から戦争が抜けることはない
 小さな火種も近所中にいっぱいだ

 己の眼を疑わず
 善悪すら疑わない

 義眼を自己の眼にすり替えて
 すり替えていることにすら気づかない
 
 ひとりひとりが、己の中へ探求をはじめなければ
 小さな一つ目どもが合体して 巨大な化け物になる

 外界ばかりを変えようとしたって、何も変わらない
 ∴ 人間史から戦争が抜けきることはない

 これは、一つの可能性

 自己探求を、ひとりひとり、はじめること──
 子どもも大人も、男も女も、関係なく

 外界をつくっているのは
 自分は違うと どんなに思ってたって
 その外界をつくっているのは
 眼に映る外界をつくっているのは
 他ならぬ、この自己自身なんだから