ホントのこと

 私には、何がホントで、何がホントでないのか、分からない。
 私のホントは、ふつうの人のホントではないようだ。

 でも、私にはホントに思える。ホントに見える。それが「ホントでない」と言われると、困ってしまう。
 どうしたら、何を信じたら、何がホントか、分からなくなる。

 何がホントか、分からない。どうしてみんな、これがホントだって、思えるんだろう。
 何がウソだって言えるんだろう。
 ウソがホントだったら、ホントのことになるのかしら。
 私には、分からない。

 分からないままで、生きていては、いけないだろうか。
 人に、迷惑をかけて、生きていては、いけないだろうか。
 なんでこうなってしまったのか、自分でも分からない。

 何が私を生かしているのか、分からない。
 何が私を死なせるのか、それも分からない。
 運命、としか言いようがない。

 みんな、同じではないですか。

 なんであの人は、あんなネクタイをしめているのか。
 なんであの人は、あんな首飾りをして、耳や鼻に穴をあけて、なんであんな服を着てるのか。

 本人にも、ほんとうのところは、分からないんじゃないですか。

 わけのわからないものに生を受け、
 わけのわからないものに生から離され、わけのわからないこの世に生き──
 みんな、同じではないですか。