── 死にたいねえ。
── そりゃそうだ。
── わかってくれる人がいて、嬉しいよ。
── だから一緒にいるんだよ。
── わからない人には、わからないから。
── だから、「わかる」ということが、わかるんだよね。「わかる」は、「分ける」から来ているという。
── 「わからない人」と「わかる人」。要は、自分が都合よく、気持ちよくつきあえる人は「わかる人」になるんだろうな。
── それ以外の人は、あまりつきあいたくない人、になる。
── ああ、つきあいにくい人で一杯だよ、この世は。
── そして自分のことをほんとうにわかってくれている、と思っている人が、ほんとうにわかっているのか、わからない。
── ああ、「分けない」でいられたらなあ!
── そしたら、きみとぼく、一緒にいないよ。誰でもいいことになる。
── そしたら、ほんとに平和な世界になるだろうか。争いのない、イイだのワルイだのの価値観のない、人に対して優も劣もつけられない、区別や差別のない、穏やかで、みんなが落ち着いていて、「いい天気ですね」って笑って言いあえるような、それだけで幸せを感じられるような、そんな世界にならないだろうか。
── そうなりそうもないから、死にたいんだろう?
── えへへ。
── 絶対そうなりそうもない世界に、そうなればいい、と望むのは、どだいムリな話だ。きみは自分が正しいと思っている。だから世界が間違っていると思っている。人に、優や劣のレッテルを貼るのを悪とするのは、そうする自分が正としているからだ。おかしいと思わないか、優劣を否定する者が、正悪を決め、喜んで自分を肯定しているなんて。
── うん。わけのわからない、矛盾の塊だ。こんな自分を消したい、消えたいと思うよ。とにかく死にたいんだ。
── そんなきみだから、ぼくが一緒にいることを忘れないでくれ給えよ。
── ありがとう。