想像することから、恐怖が生まれることは分かっている。
その恐怖、不安とも言い換えられるもの、その不安に飲まれて、あたかも生きてることがつらくなる、ということも。
飲まれるどころか、喰われてしまう。
怪獣の着ぐるみの、その大きな口に、頭から突っ込んでいく。
そして「分かって」いたところで、どうしようもない。ガシッ、と、大口が頭を捕まえる。
時間が雪みたいに積もる中で、怪獣の大きな口にくわえられた頭は、もう動かない。脱出不可能だと、「分かる」。
だが、それでも、それでも、だ。
首から下は、動くのだ。
ジタバタと、手を振り、足だってバタバタさせることができるのだ。
怪獣、それ自体には、攻撃できない。
ケッ飛ばしたり殴ったりしたら、震動で、頭が痛くなる。その鋭いキバが、メリ込んでくるかもしれない。
で、わたしはくわえられたままになる。怪獣も、じっとして、動かない。
静止中。
もう、あがくのはやめよう。抵抗も、すまい。なるようになれだ。
すると、なんだか楽になった。苦しかったのも、楽になった。
ああ苦楽、おまえは、同じだったんだな。同じ、わたしの頭のつくった、けなげな想像だったんだな。
喰われそうになっていたのは、誰だったのだろう?