子どもたちへ(2)

 さて、ところが、きみは「ほかの人たちより秀でたい」とする気持ちになる時もあるだろう。ほかの人に、負けたくない。自分が、抜きん出たい。相手を、負かしたい。そんな気持ちになる時があるだろう。

 これを競争という。かけっこなんかして、ビリだったら悔しいと思う。でも、それがきみの全力だったら、それでまったくいいのだよ。大切なのは、その時、自分が全力だったということだ。

 なんでこんなことをするんだろう、と考えるのもいい。そういう人は、かけっこなんか参加しなくていい。イヤイヤしたって、ろくなことにはならないよ。それより、自分の好きなことをすることだ。それが、ほんとうに全力で向かう、全力で向かえることだから。

 大人はね、やたら競争をあおって・・・・くる。まるで、負けたらダメみたいにね。どうしてダメなのか、考えようともしない大人も多い。それが当然だといってね。

 でも、なぜそれが当然なのかを考えること。それがほんとうに考えるということだ。

 真剣に、自分の好きなことに向かって、それをやってみよう。絵を描くのが好きなら、絵を描くんだよ。音楽が好きなら、音楽をつくってみよう。そこできみは、くじけることもあるだろう。自分より、この人の方がすごいって、負けた、って感じることもあるだろう。でもそれは大切な、きみだけができる、きみだけの体験、きみだけの痛みだよ。

 人の痛みも、きみはわかることになる。それはほんとうにすごいことだよ。

 だから、くじけたからって、自分はもうダメなんだ、なんて思わないでほしい。

 きみは、すごい体験をしたんだよ。

 自分を知っていくこと。これが、とっても大切なことなんだ。

 そこから、また、考えて行けるんだよ。

 どんなに学校の成績が良くったって、それは学校という場所の中のことでしかない。世界は、もっと、広くて、大きいよ。

 そう、きみは、生きているかぎり、ずっと成長をやめないんだよ。大きく、大きく、育っておくれ。