町内会

 わたしは奇人変人にならねばならぬ。まともでは生きて行けぬらしい。
「この町の常識は世界の非常識」町内会長が教えてくれた。
 このような町は点々と各地に存在し、この国を世界を覆い、ネットワークで繋がっているんだと。
「そうならないと、空気が薄くなる。あんたのいる半径 1.5m以内の空気が自動的に薄くなるんだよ」
 会長は言う、そうなっているんだと。そういうシステムで管理されているんだと。
 
「じゃあ、この町の常識は世界の常識じゃないですか」ぼくは反論した。〇×△□…
 チッチッチ。町内会長は人差し指を立てて左右に振る。そして言ったんだ、「非常識という標識を建てて、交通の混乱を防いでいるもんで。このルールに従ってもらわんと、あんたの半径 1.5mが広がってしまうもんで。てなことになると、混乱しちまうだろう? 社会の秩序が」
 よく管理されるために、《これはダメです》と思考の標識が建っているのだと。今までの常識をひっくり返されたら、みんなが混乱することになるもんで。

 あんたの吸う空気が薄くなったのは、そういうわけさ。あんた自身、生きにくくなっているのは、反抗しているからなんだよ。あんたの吐く息もこの町に伝播しちまう。世界は繋がっているからね!
 従ったほうが身のためですよ… 何が正しいとか間違ってるとかじゃないんだよ。そうなっているんだから!
 得々とした表情で、彼はわたしに言い聞かす。
 わたしは半年分の町内会費を払う、彼は用意した領収書をくれる。
 風紀を乱さんよう、頼んますよ。空気を汚さんように!
 彼は玄関先から胸を張って去って行く。次の家に向かっていくために。