戦時下にて(2)

 戦時下じゃ、こんなことはしょっちゅうだ。極限の状態だから、生の縮図だ、一瞬の、一瞬だけの。
 だって次の瞬間には死んでいる… かもしれないことが、リアルに想像できる。
 一瞬だから、それが永遠になる? 残されたものによって?
 Bの場合もそうだ 、彼は近くのビルが砲撃された瞬間、妻子を抱きしめた。テーブルの下で。彼の背中だけ、テーブルからはみ出していた。彼の家は崩落した、瓦礫の下に、女と子どもだけが生き残った。
 女は言った、「彼が私達を守ってくれて… 私達の頭を抱きかかえてくれて…」
 だが彼は、彼ひとりだったら、何も守るものがなかったのだ。
 彼は自分のためには死ねなかった。自分以外の守るもの、守るべきもののために、彼は死んだのだ。
 道路を、銃を抱えて闊歩する兵士どもと何が違うだろう?
 自分以外のもののためにしか、生きる理由が見つけられない──《平和》な国の日常も、そんなようなものだとしたら。
 人間は自分以外のもののためにしか生きられない? そのくせ見栄を張り、虚栄心を満たそうとし…
 平時下と戦時下、その心情の回り具合、何が違う?