復興(1)

 もうあんなのはまっぴら、もう二度とあんな時代になっちゃいけない… やっと終わったんだ、やっと!この瓦礫の山… この残骸… 何にもなくなってしまった… うちの人は戻ってきたけれど… もう二度とあんなのは… 酷かった、でももう終わったんだ… やっと終わったんだ…
 四年三ヵ月! 数えたくもない… 長かった、でも終わったんだ、やっと! もう、あとは生きてくしかない… まったく、生きてくほかない… 生きてくしかない、ほかには何もいらないんだ… 近藤さんも森本さんも死んでしまった… 残った、残された者で、やってくしかない… ほかに、何もない、そうするしかないんだ… でももう、高いビルもつくるまい… ただでさえ大地が揺れるんだ… お高いものは崩れ落ちる… 竪穴住居が安全だ… 木の実は勝手に成ってくれる… 今まで食べ過ぎていたんだ… そんなに食べなくたって良かったんだ… この川の水は綺麗なはず… 火の起こし方… プロメテウスに教えてもらわなくたって… ああ、土を買い、肥料を買い、水を買い! おかしな話だった! わたしたちは殺されるようにできちゃいなかった! もう、あったんだ、充分だったんだ、これ以上を求めなくても!
 もうコンクリートでつくるまい… ブロック塀も… 土地なんて誰の物でもなかったんだ… 雨風しのげりゃいい… ダムなんて要らなかった… 山を削り、木々を大量に伐採したばっかりに… 何でも人の手で造ろうとしたばっかりに… もう何も造らなくていいんだ… 生きてりゃいいんだ… 残されたもの同士で… ひとりじゃ淋しいからな!… やってけない… 残されちまったもの同士で… 元に戻そうなんてするまい… 元が間違っていたんだ… 慣れ切った、あの生活が… あれが当たり前だった、コンビニがあってスマホがあったあんな生活、日常が! 元に戻せば、また同じことの繰り返しだ… ゴミばかり出す… 機械の言いなりになる… おかしかったんだ、あんな当たり前が… わたしたちは学んだんだ… 身をもって… 復興なんて糞くらえだ… あのクスの木より高い建物を造るまい… 金で買えないもの、しあわせなんて、物じゃないってことを… 学んだんだ、身をもって…