復興(3)

 平和な、ほんとうに平和な日々だった! 言い争うことは稀にあった… 感情から生まれる言葉はロクなもんじゃない… でも彼らはすぐ忘れた… 必要な記憶と不必要な記憶を彼らはちゃんとわきまえていた…
 彼らは生きていること、ただそれだけで全く満たされていた… 一人でなく、十人でもなく、百人でもなく… 生きているものがある、それが知れること、これだけでよかった。
 彼らはかつて何がわれわれを滅ぼしたかを忘れなかった…

 これをするとよくない… こう考えるとよくない… あれができるとよくない… これができないのはよい…
 どんな思考、どんな心持ち、どんな態度、どんな行ない、どんな生活がわれわれを滅びに導いたかを忘れなかった…

 何年、何百年、何千年たったろう… 彼らは時計を持たなかった… 海の向こうから、赤い船が見えた… 白い肌をした連中だ… 連中、彼らを憐れんだ… 土人ども… 野蛮人ども… 言葉も知らない… 読み書きもできない… ボロ小屋に住んで… これが人間の生活か?… その前に人間なのか、こいつらは?…

「ああ! 俺らを認めてくれ! 知ってるよ、あんた方のことは… よく、よおく、知ってるよ!」
 彼らの声が聞こえた… 口に出しちゃいないが…
「俺らぁ、知ってるよ! 知ってるよ!」
 わたしには聞こえた…
 
 銃声も… 悲鳴も… 逃げ惑う女子供の声も…
 もうダメだ、おしまいだ… 几帳面に、繰り返しやがる… また歴史のつくり直しだ… 一体、いつになったら、… いつになったら?