一つ屋根の下に暮らしていれば、ただ仲の良いだけでは済まされない時がある。
〈 私にも欠点があります。貴方にも欠点があります。補い合って、仲良く生きたいと思います 〉
太宰がそう言ったところで、何かをきっかけに仲良く行かない時がある。
今回の気まずさの原因を思い出した。
僕としては一生懸命何かを話していたのだが、彼女がほとんど聞く耳を持たない様子だったので「なぜ言葉に重きを置かないのか」と言ってしまったことが発端だった。
彼女も僕も、あまり「ケンカ慣れ」していない。
内向的な二人なので、本気で相手に面と向かって怒鳴り散らしたりできない。そんなことをしたら、後から自分が嫌な気持ちになることを知っているからだ。
相手に対して、何かイヤな感情を抱いても、それを自分の中でなだめすかし、相手には直接言わぬようにして暮らしてきた傾向はある。
しかし、どっちにしても同じなのではないか。ベクトルを相手に向けようと、自分に向けようと、気まずくなったら最後、お互いにイヤな思いをするのだから。
いや、二人とも自分の内に引き蘢るから、浮上のきっかけもつかみづらい気がする。
感情をぶちまけ合える関係だったら、相手と見合って見合って、相撲のように解決も早いような気がしなくもない。
まあ、何かの弾みでこうなったのだから、何かの弾みでまた変わるのだろうけれど。
〈 世界は、物の弾みでできています 〉
それにしても、弾めるだけの、身軽さがなくては。