ところで、私の股間にあるものは、恋人から「ポチ」と呼ばれている。
以前、私の意志に反して上昇志向になるこのものを、私は嘆いていた。
「これはもう、独立した存在だ、どうしてこうなるのか分からない」
私は本気で悲しくて、涙ぐんでいた。
(性欲は、ほんとうに相手を愛する、さまたげになると思ったから)
それ以来、これは恋人から「ポチ」と命名された。
あらぬ時に上昇志向になると、「ポチ! 何大きくなってるの!」と叱られたりしている。
時には、「ちっちゃいねー! 可愛いねー!」とも言われる。
私のポチは、黙っている。
ふだんは、おとなしい。そんなに、悪いやつじゃない。
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ところで、このポチ、以前はもっと芸達者だったことを付け加えさせて頂きたい。
つまり、昔つきあっていた女の人に、わがポチは様々な芸をして見せたのである。
彼女とは、セックスレスであったから、少しでも「慣れてもらおう」と思って。
1)大車輪。ポチをつかみ、体操選手のようにぶるんぶるんと大回転させて見せた。
2)バスタオル。上昇し、文字通り「ちんちん」の恰好になったポチに、バスタオルを掛けて、ハンガー代わりにして見せた。役に立つでしょ、使ってね、きみのものだから、と言いながら…。
3)変装。私の眼鏡を、上昇したポチに掛けると、ポチは髭をたくわえた英国紳士のような、学者風な顔つきになった。
ついでに、その突起した尖端に、マジックで「・ ・」を描き、「目」をつくると、ポチはきょとんとした顔になった。
いずれも、彼女に大ウケした。彼女が笑うと、私も幸せだった。だが、セックスレスは解消されなかった。