人間

 外を歩く。

 外国人観光客が多い。もちろん日本人もいる。

 ああ、人間がいるな、と思う。

 思い思いの服を着て、この世に一つしかない顔を持ち、生まれ持った身体をもって、歩いている。

 ああ、人間がいる、と思う。

 何のためにこの世に生を受けたのか?

 空には雲が。青い空も見える。陽射しも強い。今日は、梅雨の晴れ間なのだ。

 建物が立ち並び、道路が舗装され、この中を人間が行き来する。

 多くの人が行き来する。その人たちを見ていると、ああ、人間だ、と思う。

 自分に対しては、「人間だ」という意識はそれほど強くない。

 集団を見ると、「人間」を強く意識する。

 そして自分も、この集団、往来を歩く「集」の一人なんだと意識する。

 一人、部屋の中にいては、意識できない。

 自分も、人間の一人なんだ、と…