とりあえず「昭和」と括られる時間を過ごしてきた一人として、あの頃をちょっと回顧してみよう。懐古趣味、蚕、カイコ、糸を引き引き。
なんかね、電柱が思い浮かぶんです。灰色の空、モノトーンですね、そんな空のこっち側に、電柱が一本。電線も、横に伸びてます。
地面は、土っぽい。土じゃないんだけど、まだ土のなごりがあります。アスファルトになっていたはずなんですけど、どうも土っぽいんですね。
で、なんだか子ども達が、わいわい、わいわいでもないんですけど、なんだかいるんです。何やってるんだろう。おかっぱ頭、半ズボン。
回覧板が回ってきて、隣の家に持って行くと、そこのおばさんがお菓子をくれたりして。ニコニコして、大人は子どもに寛容な感じです。ややこしげなじーさんもいましたが、それも景色の一つに見えます。
ステレオで、大音量で音楽かけても、苦情はそんな、来なかったですね。赤ん坊の泣き声も、親が子を叱る怒鳴り声も、平気で聞こえて、まぁ、何だったのでしょう。
そんな、きれいな家は、なかったような気がします。あっても、まぁ、どうでもいいというか、私が子どもだったせいでしょうか。
いやいや、なかなか、言葉にできませんね。全体、なんですよ。漠然とした、空気みたいな。たぶん、今が、個々に生きてるような感じですから、余計そう見えるのかもしれません。
なんかね、「人」が、いたような気がするんです。
しかも、何でしょう、生きてる人が。いた気がするんですよね。
過ぎてしまえば、みんな、そう見えるんでしょうか。
その過去になる今を生きてるはずなのに。