近所の大きな本屋で、「ふるほん市」をやっていた。
単なる古本ではなく、既に絶版になったもの、訳者が変わる前のもの、というプレミア的な文庫本ばかりの「市」であった。
その中には、椎名麟三の「重き流れのなかに」「美しい女」「永遠なる序章」もあった。
「重き流れのなかに」も好きな小説だったので、昔々の友人と再会したような懐かしさに気持ちが和んだ。
そう、この表紙、この文体…当たり前だが、当時のままのようだった。本って、いいなと思った。
大江健三郎のエッセイもあって、2冊で2560円くらいした。
気になっていたベーベルの「婦人論」もあったが、やはり上下巻の2冊で2560円くらいする。
薄いガルシンの「あかい花」も、1260円くらい。ボッカッチョの「デカメロン」は全巻で12000円を超えていた。
椎名麟三は、昭和46年あたりに刷られたもので、定価180円であった。それがこの「市」では、やはり1260円くらいするのだった。
これも絶版なの!?という本もあった。音楽のCDなんかでも、名盤がもう廃盤になっていたりする。
売れるもの・ウケるものだけがイイものであるはずないだろうに…
しかし椎名麟三を、久し振りに巷間で見た。嬉しかった。
家にある、ほとんどボロボロの「重き流れのなかに」を、久し振りに読み返そうと思う。