「夜の果ての旅」二度読み中。
この人は自分の戦争体験、志願して兵士となり、のちに完全な反戦主義者となる── 兵隊生活中の体験を全く内部から、その活動、生活ぶりを描いている… 残酷なのにユーモラス、笑ってしまう箇所多々あり。
この人が「真理は死しかない」と言った意味、おぼろげに理解。
明日のない、次の瞬間には死んでしまうかもしれない戦地、それでも略奪をする、村を燃やし、教会を燃やし、食糧を漁り、しこたまそれも溜め込んで… 背嚢パンパンに詰め込んで、中には鏡台や家具さえ持ち出そうとする者もいた! まるで永遠に生きるかのように。死なんて、自分の死なんてあり得ないように。銃弾飛び交い、さっきまで生きてた仲間が死ぬ中で。
生きるということの縮図! 極限状態でさえ、人間は幻想に挑む! 勇気なんて捨てるがいい、勇敢であることなんて、ブタのエサにもなりゃしない。臆病であれ、小心であれ! 隊長なんて、死神だ。われらに死を強要する。こんな糞みたいな部隊、「我が軍」なんてさっさとやられちまえ…
敵はドイツ軍じゃない、内にいる──
セリーヌ独特の、汚い言葉。何回も読み直す、でないとうまく頭に入ってこない。せっかくの凄い文が、惜しい。よく読まないと。その裏に、セリーヌの人間愛、やさしさに触れることを逃すことになる。
何年か前、ついこないだだ、セリーヌの作品が新たに発見されたそうだ。「戦争」という本で、日本でも出版されている。奈良の図書館にはない。ああ、本を読むにもお金が掛かる… でもこの人は贋者でない、本物だと思う。なにものにも代えられない、と言っては大袈裟か。でもそんな気にさせられる。
そう、戦争は誰のためにも、何のためにもならない。そこに行く者は、隣り合わせどころじゃない、一瞬先は死だ。死、死、死! それでも兵士は物品を掻き集める。背嚢に詰め込む。どこから、そんな行動が? そうだ、それが生きる、生きるってこと、何も戦時下に限った話とは思えない。俺だって、そんなふうに生きている… それが、生きるってことか?
真実は死にしかない、とすれば、いや全くそうだろうが。それ以外のこと、時間、生きている間のことは…