ひとつ

たった一つ、最期に一つだけ望むものがあるとしたら?

── 望みは苦しい時にこそ生じるものだから… 〈安らかな自然死〉かな。その時は安穏を感じることも、叫び声をあげるヒマもないかもしれないが。そっと、死にたい。一瞬だけの苦しさなら…。

それなりの覚悟はしているよ。でなきゃこんな生活できないよ。生きようなんて積極的な気持ちなんか、九歳の頃に失くしているよ。あとはずっと、生かされてきた、生かされてきた… 意志になんか関わりなくね。

いつだって最初で最後だ。一生に限った話じゃない。よく、「九十歳になった。人生、これからだ!」なんて寺の住職が書いているが、いつからだって始まっていたのさ。今に始まったことじゃない。十歳の時、二十歳の時、三十四十、五十… 今に始まり、今に終わるのさ。いつだってね…