「ぼくを探しに」

 シルヴァスタインの「ぼくを探しに」という本がある。
 帯には、「大人のための絵本」とかあった。
 この「ぼく」は、丸い線と、三角の線だけの存在である。

 丸の中に、点がひとつ。
 この丸は顔で、点は眼。横顔なのだ。
 三角の部分は空間になっていて、口のようである。

〈 何かが足りない それでぼくは楽しくない 〉

 から始まって、

「足りないかけらを探しに行く」物語。

 この「ぼく」は、道を転がって行く。
 途中、三角を見つけ、その口にふくんでみる。
 四角いのを、口にはめてみたりする。
 どれも、しっくり来ない。

 やっと自分に合う三角を見つけたが、きつくくわえすぎて、壊してしまったりする。

 しかし、ようやくこれはまさにぴったり合いそうな三角と出会う。
 はめてみると、ほんとうにピッタリだ!
「ぼく」は歓喜する。

 だが、足りないかけらが埋まったために、「ぼく」は歌が歌えなくなる。
 丸そのものになったので、転がるスピードが速くなり、花や蝶と戯れることもできない。

 次第に、「ぼく」はつまらなくなる。

「なるほど、つまりそういうことだったのか」と「ぼく」は考える。
「ぼく」は、せっかく出会えたかけらをそっと置き、また転がり始める…

 いい話ではないか。